

十二秘色のパレット
や
ガートルードのレシピ
など、この草川為さんは私の好きな漫画家さんの一人。
その方の新作が吸血鬼モノ、という訳で買ってみました!
――白泉社系の雑誌はLaLaと花夢本誌のみ購入で、この単行本に収められた4作の短編のうち3篇は本誌ではない増刊に掲載された作品。
吸血鬼モノ3作、幽霊モノ1作という中、前者の吸血鬼モノ3作、それぞれ全く別の話になっていて。
――そう言えば、同じ作家さんで全然別の吸血鬼モノ作品を書いてる、って、そう言えば小説・漫画によらず読むの初めてだなぁ。と思いつつ興味深く読みました!
それぞれシチュエーションも吸血鬼の設定も、関係者の設定も全然違うのに、どれも面白かった!
……いえ、笑えるって意味での面白い、ではありませんが。
まず1作目。表題作のこの作品。
牙折れ――血を吸えない吸血鬼、って設定は割とよく見かける、私的にはせっかくの吸血鬼設定を台無しにする残念作品、という位置づけなのですが。
これは珍しく、そういう設定でも面白い、と思わせてくれる一作でした! ……切ない、というか。
“血が吸えない”牙折れ、という存在の設定が全く残念ではない、むしろだからこそ切ない、と思わせる、吸血鬼というモチーフの美味しさをしっかり味わえる作品でした。
そして2作目。前述の通り、一作目のものとは世界もシチュエーションも、おそらく吸血鬼自体の設定も全く違う、吸血鬼モノ。
まず、少女系の漫画や小説に登場する吸血鬼の大半は、男性で、ヒロインとどうにかなる……というのが当たり前のパターンなのですが。
これは吸血鬼が女性、吸血鬼に襲われるのはヒロイン――。
吸血鬼に襲われ、吸血鬼になってしまった女の子と、たまたまその場に居合わせた男……。
件の吸血鬼は悪役風の扱いなのですが。
こうなってくると、大半が悪役吸血鬼をやっつけるぜ、という吸血鬼ハンター系の話になる場合が多いのですが。
こちらもそういったベタな展開にならないところが素敵。
短編作品なのが惜しいくらい、彼と彼女の今後が見てみたいと思える作品でした!
――そして3作目。これだけは本誌で一度読んだことがあった作品だったのですが。
こちらは……一応吸血鬼は出てくるには出てくるけど、どちらかというと滅びかけの怨霊みたいで『人物』としての登場はナシ。
そんな怨霊的吸血鬼がとり憑く修道院の廃墟に、男と女――。
生まれと運命を厭ってちょっと馬鹿をやらかした娘と、そんな彼女に巻き込まれた生まれは良くとも育った環境は彼女とトントンな領主の甥っ子。
あの結末のあと……あの領主の甥っ子はどうするんだろうなぁ。
間違いなく彼女の事情くらいは調べるのだろうけど……、その後。彼女を追いかける……のかなぁ?
ちょっと退廃的な雰囲気が、救われない結末が、そういえば最近読んだ吸血鬼モノってこういう雰囲気あんまりなかったなぁ、と思い出させてくれました。
そして最後のは吸血鬼ではなく幽霊。前世で心中しようとして失敗し、男だけが亡くなり、女は助かり――。
男の方だけ幽霊となってこの世に留まり、やがて転生したヒロインと出会う……。
前世のちやという女性として千弥を見て、共に来て欲しいという葛。
要は生まれ変わりもの……、というワケですね。
これは……、これも簡単にハッピーエンドとは言えない複雑な終わり方をしてます。
多分、読む人によって感想が変わってくるんだろうなぁ。
ちなみに、私的には表題作の「僕の棺」が一番のお気に入り。
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