

かつて、別に男を作り、離婚に至った母が亡くなったのをきっかけに、母の実家のある倉敷で、『カフェ』をやる長兄についてやってきた、兄2人と妹1人、弟1人の5人兄弟の3男、零次。
以前住んでいた街、住んでいた家だと言うけれど、両親が離婚したのは13年も前で、当時5歳だった彼に、その記憶はない。
――が。
お向かいさんに引越しの挨拶をしに行って。
『からたち童話専門店』と看板を出した店の店主に挨拶をしたとたん、長兄の態度が激変。
以降、決して関わるな、と兄弟たちに厳命が下される。
でも、その店主は街の人に「ほっこりさん」と呼ばれる、笑顔の素敵な超絶イケメン。
……5兄弟だって、お隣さんに「アイドルグループみたい」と言われるくらいには充分イケメンなのに。
しかし。どうにもこの店、おかしい。夜中に度々妙なお客が出入りしている。
しかも。どうにも新しい家で怪異が続いている。
何やら知っている事のあるらしい長兄も、とうとう折れ、真相が語られる……。
この真相っていうのがね、まあ、割と泣ける……。
ホントウは怖いグリム童話ならぬ。アンデルセン童話の絵本がキーだというのは割とすぐ読めてしまったけど。
でも、このえんどう豆の話は私は知らなかったんだよね……。
読んだこと、もしかしたらあるのかもしれないけど、記憶には残っていなかったというか……。
とりあえずこれは出会いの一篇、お向かいさんと長兄の神、そして主人公零次の話だろう。
そしてもう一篇、この一冊に収められている。
こちらは次兄に焦点を当てたお話で、「美女と野獣」、「人魚姫」が出てくる。
……人間に恋した妖の話、なんだけど。
店主の天然ぶりと、次兄のブリザードぶりとで、とりあえず恋バナに発展しそうな気配は……ない。
だというのに、ああいうオチがつくとは。
――この童話店の客は妖だけど、何か超人的な能力を持ったもの、という感じじゃなく。
割といいやつ、という感じ。
読み終わったあとに、少しいい気分になれる、そういう話。
長兄、次兄と来ているから、きっとあと妹と弟の話もあるだろう。もしかしたら、主人公当人のも。
これはぜひ次巻も買ってみようかな、とすぐに思える作品でした。
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