

元は、商売人の心得みたいな意味合いの強かったこの標語。
でも最近はモンスタークレーマーや、その予備軍みたいな人が増えて、実際「土下座ムービー」なんてのまで出回る始末という現状のせいで、どうにも良い気持ちで見れない、この言葉。
“お客様は神様です”
発売予告のタイトルを、文字で見ただけではそういう理由でその時点では買おうとか、読んでみようとは思わなかった作品。
だのに、意外にも随分とほのぼのした表紙のイラストに、あらすじに書かれた『お客は神様――』の文言に、ちょっと読んでみようかなぁ、と唆されまして。
そう、このタイトル、本当にこの話の舞台である駄菓子屋さんを訪れるお客というのが人間ではなく本物の神様だから、という……。
最初から最後まで、ほんわかほのぼのだけど、ちょっと切ないエピソードが入ったりして。
お客の神様というのも、今のところ特にご高名ないずれかの神様ではなく、八百万の神様。和御魂に傾いた付喪神のような、ある意味わりと“庶民的”な神様。
その割に、昔話のエピソードでよくある、「大きいのと小さいの、どちらか一つだけを選べ」というアレ。
「綺麗なのと、特に綺麗でなないもの」や、「贅沢品と、ごくありふれたもの」をどちらか選べというエピソードは、大体「いい」おじいさんやらおばあさんは「小さいほう、特に綺麗でない方、贅沢品でない方」を選んで幸せになり、セットで出てくる「意地悪」なおじいさんやらおばあさんは「大きい方、綺麗な方、贅沢品」を選んで不幸になる、というのがセオリー……だというのに。
ちょっとズレたドジっ娘雀と欲のないお人好しがそのお約束の選択をするとああなってしまうのか……という……。
本人たちにすれば笑い事じゃないだろうけど、つい笑いたくなるエピソードや、どちらかというとつい仏教的な物と思いがちだけど、そういえばあれも別名“道祖神”という神様だったと思い出す、お地蔵様のエピソードとか。
特に、ラストの“はちみつ”のエピソードは……。
正直、話の流れやオチは割と直ぐに読めてしまったけど、それでも、オチでうっかり泣きそうになりました。
文章も読みやすいし、キャラクターも良し。
これは、面白かったです。
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