

お狐様のいる図書館、って事で。あらすじを読んだ時点では、『幽遊菓庵 春寿堂の怪奇帳』シリーズの図書館バージョンみたいなものを想像していたのだけど。
この図書館に住む妖というのが、『図書館に住んでいる』というよりは、『図書館の蔵書に依り憑いている』ので、“本体”である本からは離れられず、またその本を読む人間が居なくなれば存在が消えてしまう。
そんな妖の憑いたワケアリ書籍を管理するのが、この図書館で唯一の人間である葦田。……とは言え、その彼も、こんなワケアリ図書館員なのだから、タダの人間じゃあない。
そして、ひょんな事からこの図書館に迷い込み、偶然狐憑きの本を読んでしまったことがきっかけで、この図書館に通うようになった女子高生と、その“狐”が主人公。
つまり、狐神が主の和菓子屋の、図書館バージョンと言うには事情が随分異なる感じ。
体の弱い弟の事情で、それまで住み慣れた都会を離れ、志望していた高校ではない田舎の学校へ通わなくてはならなくなり、色々と不満を抱いていた彼女が求めていた“居場所”。
今にも消えそうだったというその“狐”を救った恩返しに、と、葦田の手伝いをしつつ、図書館通いを始めれば、早速妖がらみのいろいろに巻き込まれていく……、と、ここまではいい。
けれど、ただでさえワケアリな図書館の“住人”達の中でもとりわけ“ワケアリ”っぽい狐。
けど、その“ワケ”というのが、最後まで読み進めても分からない。
この点から、どうやらこの話、続くらしい……と思われるんですが。
気になるのが、タイトルにある“貸し出し禁止”の部分。
確かにストーリー中でも、葦田が「ワケアリだから貸せない」という意味合いの事を言っているのですが。
その割に、貸したまま返ってこない本と、貸した先のご老人の様子を見に行かせる話が途中挟まってるんですよね……。
それも、「訳なし」の本ではなく、確実に「ワケアリ」な本を。
一応、彼女の事情はこの巻で、一先ずの落ち着き先を見つけたようなので、次に続くのは当然、狐の事情と思われるんだけど。
これは、次で終わるつもりなのか……。
もしもそれ以上に引っ張るつもりだとしたら。
次の巻の出来栄えが、かなり左右するだろうな、と。
あえて今、「妖」関連の本を開いた理由は、当然「宿飯」の影響があるからなので。
あれと比べてしまうと、かなり物足りない感がある……。
これはこれで面白くないわけじゃないんだけど、「んん??」と思ってしまう場面がちょっと多かったのが残念なところ。
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