

ここ最近、書店で見かけて気になって……つい、という買い方をした本の中では一番の当たりだったと思った一冊の、続編、という事で、富士見L文庫でこの情報を見かけた時から楽しみにしていました。
何しろ、前巻の終わりが、まぁ、後味の良い――その一巻のみの読み切りだったとしてもおかしくない終わり方だったもので……。
でも、続刊があるような終わり方でもあったから、是非続刊を出して欲しいと思っていたので、余計に楽しみにしていたんです。
――ただ。一巻は面白かった、けど、2巻はイマイチ……ってパターンも少なくないから、期待が大きかっただけ、ちょっぴりの不安もあったのだけど。
でも、同時購入した「執事様のお気に入り」最終巻や、こちらもお気に入りシリーズ「おこぼれ姫」をも差し置いて、まず真っ先にこれを手に取りページをめくった理由は……、やっぱりこの表紙イラストのせいでしょう……。
この富士見L文庫というレーベル、小説の内容はどちらかといえばライトノベル寄りなのですが、イラストは表紙のみで、中身にはキャラクター紹介や口絵カラーはもちろん、挿絵の一枚も無いので、前巻の時点で明確に姿がイラストとしてあったのは鬼の大旦那様と、葵だけ。
けど、今秋は随分と賑やかで、元若女将の雪女、お涼や若旦那の銀次(若旦那バージョン)、仲居の化け狸、春日に厨房の達磨たち、そして手鞠カッパまでが葵の肩に乗ってご登場、だというのに。
旦那様がなぜか後ろで半分隠れてポツンといるのが……、書店で見た時から妙に哀愁漂っていて……。
今回、暁が省かれちゃったのが残念だったけど。
そうしてページを開いてみれば、気づけばいつの間にか最終ページ……。
不安は完全に杞憂で、今回もまた面白い。
隠世というのは、確かに今流行りの“異世界”の一種だけれど、でも、突然一からでっち上げたご都合主義な世界と違って、遥か昔からある意味実際に存在する、由緒正しい異世界で、特に和風色が強いのに、“異世界”という異国風味の漂う不思議な場所。
やっぱりそういうノスタルジックな世界観が、「千と千尋」っぽいなって思うんだけど。
まあ、ヒロインの葵がたくましいおかげで、初対面こそ意地の悪そうな妖――例えば暁とかお涼の、彼らと付き合いの長い同僚妖すらも驚くイガイな一面というやつがひょいひょい出てきて、実に楽しい。
今回も新たな
犠牲者――もとい、カモがネギをしょってやって来る……。
何しろ、隠世でも有名な「ダークヒーロー」で、かの人に似ていると言われた日には、泣く妖の子すらも青ざめ黙る鬼の大旦那様をも青ざめさせる「津場木史郎」の孫娘。今回はちょっと、真剣に命の危機にさらされたりもしているはずが、そのオチ故に、またしてもさっぱりと良い後味で……。
正直、彼女の知らない裏では何か黒い事情がありそうなのだけど。
そう、この様子だとどうやらまだ続くらしいぞ、このシリーズ……。
と、いう事で、読み終わった直後から既に次巻が楽しみです。
だって、必死に葵を口説こうとしている旦那様のアピールが、彼女によって華麗にスルーされて見事に空振りながら、でも、その割には意外といい雰囲気だったりしているのに、だけどやっぱり本格的に甘い空気が形成される前にオチがつくあたりとか。
可愛いフリして結構黒いのに憎めない銀次さんとか。
前回、名前だけは出てきていたけど、まともな出番は今回が初めての天神屋幹部の一人、「お帳場」白夜の一件とか。
このほのぼのした空気感と、ほっこり笑えるキャラクターたちが好きなんだよなぁ。
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