

今や巷に溢れかえる異世界トリップもの。――これも、そういうジャンルの話ながら、少女漫画としてはそろそろ古典に分類されそうな、一昔前の作品で。
「爆発事故に巻き込まれて異世界トリップしたごくフツーの女子高生」が、言葉も通じない世界で、よく分からない宿命を背負わされる、という話。
その宿命に関わる『目覚め』と『天上鬼』というワード。
ちなみに、異世界ならではの居能は……、一応ある、という設定だけれど、この世界の一般人が誰でも持つものではなく、ほんの一部の能力者のみが持つもの、という設定で、ヒーローのイザークは、その中でも飛び抜けた使い手で、他の能力もピカイチ。
そのワケは、話の途中で明かされ、ヒロイン、ノリコの宿命と深く関わるものだと分かる。
――といっても、まず謎が明かされるのはあくまで読者に対してであり、物語の中の登場人物たちがその事実を知るのは物語も進んだ頃なのだけど。
まー、このヒーローというのが少女漫画のお約束をことごとく守る男で……、物語を外から眺める読者のみならず、作中人物からも度々「過保護」と言われる位、ノリコが一声呼べばあっという間に駆けつけてくる。
ノリコの方も、言葉も、右も左も、常識も分からない世界に放り出されて一番に出会い、化物だらけの樹海の中から助けてくれた彼と旅するうちに彼に惹かれていく。
……そして、何より。最近の少女漫画では割と緩みがちな『少女漫画のヒーローならではの鉄壁理性』を彼が持ち合わせている。
常々二人で野宿していて、たまに宿などで同じベッドに入ってみても、キスどまりという。
今時の作品なら、少なくとも「隣に女の子が寝ていて悶々とする」図ぐらいは挿入されるだろうに……。
序盤は彼の言い訳通り、「俺にも好みがある」で済んだとしても、互いに告白し合った後の後半戦は……。
まさに、「昔の少女漫画」ならでは、なんだろうな。
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