

どうやらこのシリーズ、この3巻が最終巻の模様。
前巻、進路に迷いを感じ始めた洸之介が、ある決断をし、家を出るまでの話、というのがこの3巻。
初っ端から、音痴なくせに歌手を目指してはや50年、という鵺と、そんな彼を教師として心配する高校教師の話。
夢がない、という事に揺らいだ洸之介の気持ちを殊更刺激して。
その上で、表具師になるなら欠かせない、と、お茶のお稽古に通う、天邪鬼な新米弁護士からの紹介で、屏風を直す依頼を受け、更にその縁で頼まれた掛け軸の表装し直し依頼の依頼人、というのが問題で。あの環さんがブチ切れてます。……さすが、加納表具店に集う妖怪たちの中でその女頭風な雰囲気を醸し出すだけある。人間たちはおろか、他の妖怪たちでも止められない、と。彼女の京都弁には要注意です、が。
それは一先ず置いて。
依頼を受けに言った先で、お茶に誘われた席で、表具師として基本的な知識を知らなかったと知った洸之介。
本気で表具師になるつもりは無いはずなのに、よりによって天邪鬼に“素直になれ”と諭される、という……。
そして。……第一巻から登場していたから、そういえば彼女の回ってまだだったんだっけ、と、ついびっくりしてしまった、雪女の蓮華の話が続く。
雪女の彼女が綾櫛横丁へ帰ってきている、という事は、つまり作中の暦は既に冬。
受験生な洸之介は当然最後の追い込みにかかるはずの時期なのに、未だ受験勉強に身が入らない。
そんな彼を見るに見かねて、とうとう彼の母が動く、最終話。
とにかく毎度毎度色々と妖怪が入れ替わり立ち替わり登場する話しながら、特にホラーな感じはホントに最後までない。
最後までほのぼので終わるんですよね……。
けど、私、最近少女小説や漫画の読みすぎなのか、主人公の恋愛要素が皆無だったのだけがちょっと物足りなかったなぁ。
一応、周りでは、樹と環の激しく微妙な関係とか、兵助の婚約話とか、ぬらりひょんのシンさんが相談にのってた後藤さんの件とか色々あったのに。
個人的には、本当に将来環さんに似た人を連れてくるのか、とか。
もうちょっと、“ちらっと”でも後日談的な番外編とかあってくれたら嬉しいのに……と、思ってしまったんだよね。
けど、全体としてはかなり面白かった。
ワクワクドキドキという面白さはないし、特にお涙頂戴的な話もないけど。
けど、なんだかちょっといい感じの話が詰まってて、安心して読んでいられる面白さですね。
これはもう、キャラクターのせいだと思うけど。
何しろ、人間社会に溶け込むのが上手すぎる妖怪ばかりですから。
そも、500年を生きる化け狐の大好物がハンバーガー、ってところから……ね。
そしてその彼女の好物を知っているが故の、タバコ屋の看板娘の朝の欠かせないとあるお仕事エピソードとか……。
余りに平和すぎるでしょ、ってね? 思わずにいられません。
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